2017年7月14日金曜日

波のように現れては消える【トルコ・カッパドキア】




一人旅にでると、直感に従うことが多い。

感覚が研ぎさまされきて、人のオーラ、雰囲気に敏感になってくる。

人の純粋さ、フェイク感を感じるとることができるようになる(気がする)。

少なくとも私にとってはそうだ。



一人旅にでると、ふと出会いはやってくる。

その人と一緒にいたいかどうかは自分次第。

もし一回会ってチャンスを逃しても、また再び違う場所で会ったりするから面白い。

会うべき人が自然と寄ってくるのだ。





2014年の夏
オリバーは、カッパドキア行きの小さなバスの中にいた。

ニューヨーク育ちのアーティスト。
ここ6年は、たまにニューヨークへ出稼ぎに行って、ほとんどの時間は旅をしながらアーティスト活動をしているという。
彼の声は柔らかい。一言一句丁寧に心を込めるかのようにゆっくりと話す。


その時はバスの中の数人で会話をしていたから、カッパドキアのどの宿に泊まるかなどたわいのない話をしているうちに目的地に着き、宿が離れていた彼とは自然と別れた。




2日後、予定もなくフラフラと歩いていたら見覚えのある人が向かい側から歩いてくる。


「君のこと、ちょうど考えてたんだよ。」
オリバーは驚いたように呟いた。


君のこと考えてたなんていきなり言われたから
正直「What do you mean?」って返したくなった。

一瞬戸惑ったが、理由はすぐにわかった。



彼はカッパドキアの美しさに惚れたらしく、私をモデルにして、撮影を行いたいという。

「どんなアート?」

素敵なオファーだけど、自分のルックスに自信のない私は尻込みしながら聞いてみた。


「女性と自然を中心にした、ボディーペイントアートだよ」

「ボディーペイント?」

「そう、女性の体にペイントして、自然と共に写真をとるんだ

「え、それって体のどの部分?腕とか?」

「ううん、大体全身かな。下半身はなしでも大丈夫だけど、できるだけ何もないナチュラルな感じで撮りたいんだ」



私は一瞬で、自分には無理だ。と思った。

アートとか好きだけど、当の自分が裸になるなんてムリや。

こういうことして事件に巻き込まれたりしたらとか
人に自分の体を見せるような軽い女だと思われたくないだとか
様々な思いが脳裏を駆け巡る。

「ごめん、私には協力したいけどできそうにないや」

と一言で、断った。



彼は一瞬残念そうな表情を見せたが、

「まあ、これ僕のポートフォリオのURLだからよかったら見てみて。

と、URLをメモして渡してくれた。

彼とはその後、一緒にカッパドキアを散歩したが私に撮影のプレッシャーをかけることもなく、のんびりと時間は過ぎていった。




















宿に帰ったあと、私は彼のポートフォリオサイトを覗いてみた。

目に映ったのは、自然の中でありのままの姿で写る女性たち。

彼の描いたボディーペインティングが、いつの時代の、どこの部族の女性なのか不思議に思わせるようなミステリアスな雰囲気を醸し出している。

「モデルをやってみたい!」と直感的に思った。

しかし、直後にやってくるのは、周りにどう思われるだろうかとか、親が知ったら悲しむだろうとか、こう自分をガチガチ固めてくる先入観。

でも、でも、という必死に自分を止めようとしている。



自分は、人の目を気にしていつも生きてきた。
自分はこうあるべきである。こうあるべきでない。

そんな風に、周りの役割期待に答えようと必死になって今まで生きてきた。

自分をむき出しにするのはこわい。


この旅にでる前の6ヶ月間、ノルウェー留学ではこの思考回路にひどく悩まされたものだ。
理想像、先入観、これらは多くの場合、自分の視野を狭める原因となってしまう。
さらに、自分が相手に何かを期待するくせが付いていると、異文化生活においては期待を裏切られることが多く、自分の首を締めることになる。

だから、自分の中で勝手に形成された先入観、役割期待をぶち壊したかった。


こんなこと考えてるうちに、
なんてことをグズグズ考えてるんだとバカらしくなって、
やってみたいならやってみればいいやん
という結論に至った。


すぐさまオリバーにメールを送った。







ミラクルな日々




翌日、すぐに撮影を行うことになった。
彼のアートプロジェクトはちゃんとしたものらしく、書類を読まされたあとその書類にサインした。

さあ出発。

カッパドキアでは、タクシーも呼ぶことができるが、
それじゃつまんないよねってことでヒッチハイキングすることにした。



親指を立ておきまりのポーズで道を突っ立っていると、一台の車が私たちの前で停車した。

40代くらいのおじさんが運転席に、小さな女な子が荷物まみれの後部座席でなんとか姿勢を保っている。

おじさんは英語が喋れなかった。
助手席に積み重なった荷物を後部座席に移しながら、ここに座れというように両手を振りかざしている。

Thank you といって二人で助手席に詰め入った。

しかし、おじさんはドライブを始めるとすぐにお金ちょーだいというように手で器を作って私たちにねだってきた。

オリバーは、これはヒッチハイキングだから、お金は発生しないよ。
申し訳ないけど、お金が欲しいなら車から降りるよ。といって私たちは車から降りることになった。

おじさんには悪い気がしたが、ここでお金を払ってしまうとおじさんはヒッチハイキングでお金がもらえるものだと勘違いしてしまうかもしれない。
他のヒッチハイカーにとってトラブルの原因になりかねないのだ。

車から降りた私たちは、再びヒッチハイキングを始める。
もともと車があまり通りかからない場所なので、親指を立てながら歩いてみる。


すると一台の車が、私たちが行きたい方向から車がやってきて通り過ぎた。
と思ったら、Uターンして戻ってきた。トルコ人の家族だった。

「乗りなよ」と息子らしき人がいう。

「ありがとう、でも僕たちは今君たちが来た方向に行く予定なんだ。気持ちは嬉しいけどありがとう。」

すると、「どこでもいいから君たちが行きたい場所に連れていってあげるよ」と男はいう。

私たちは、もしかしてまたさっきと同じパターンかもしれないと疑って、
「ノーマネー。」と確認したが、男はもちろんもちろんと言う。

「おっけー。じゃあお言葉に甘えて」

私たちは後部座席へ向かう。

後部座席には母親と思われるトルコ人の女性が座っていた。

彼女は英語が話せないが、私たちが隣に座るとすぐに、ボディーランゲージをフルに使って、キャンディーやチョコレートなど自分の手元にあるものを

「ほい、受け取って、受け取って」と次々に私たちに渡してきた。

さらに驚いたことに、この女性はお財布を取り出したかと思うと、お札を取り出して私たちの手にギュウッと握らせてきた。

いらないと言っているのに、一向に聞こうとしない。
このお金で近くの公園に入れるからぜひ見て欲しいということらしい。

「今はラマダンの時期だからね。みんなお祭り気分なんだ。人を助けてあげたり、何かをプレゼントする時期でもあるんだよ。だから心配しないで。」

動揺する私たちに彼はケタケタ笑った。


私たちは最終的にお金を受けとり、深々とお礼をし別れを告げた。

オリバーは驚いたように呟いた。

「鳥肌がたったよ。こんなこともあるんだね。昔、友達にレアなTシャツが欲しいと頼まれて、僕の旅先で手に入るものだったから手紙と一緒に送ったんだけど、一切感謝の言葉が返ってこないことがあった。その時は少し腹がたったけど、自分が誰かのためにしてあげたことってこうやっていつか巡り巡って返ってくるもんなのかもしれないな。」

彼の口からちょっと腹が立ったと言う言葉が出て来たのが意外だったが、
うんうんと共感せずにはいられなかった。














オリバーは撮影地を探しながら、アートの素材として使う花束を作り始めた。

彼は植物を摘まみ取るたびに、植物に話しかける。ごめんね、君の一部をもらうよって。

根っこからは絶対に引き抜かない。

「ここの植物たちは強いね。水分がなくてカラカラの地だけど、こんなに根を張って力強く生きてる。





「オリバーはなんでベジタリアンなの?」ふと聞いてみる。

「I simply don't deserve it」

この言葉が突き刺さった。

ベジタリアニズムについては欧米人との会話においてよくでてくる話題だが、
あーだのこーだの色々なディベートが交わされる。

肉は体によくないという栄養論、環境ベースで考える環境保護論、動物愛護論などなど。

でも、オリバーのこの返事はシンプルで言い訳がましくなくて、美しいと思った。







歩き疲れてきた私たちに容赦なく照りつける太陽。
日陰を探して、ボディーペイントを行うことになった。

「この筆は日本で昔に買ったんだ。しなりがよくて気に入っているよ。

日本の製品がこんな風にオリジナルティーの溢れるアートに使われているのはなんだか意外で嬉しかった。


studioの洞窟 


「これから2−3時間かかるけど、頑張ってね。疲れたらすぐ教えてね。」

シャツを脱ぐのはやはり恥ずかしかったが、さっと脱いで彼に背中を向けた。

気温は35度を超えているだろうか、動いていなくても汗がじわじわ滲み出てくる。
オリバーはは慣れた調子で、でも慎重に、肌の上で筆を踊らせていく。

「これは植物?何を描いているの?」

不思議なペイントなので、インスピレーションはどこからくるのか聞いてみたくなった。

「君のエナジーも含め、今ここにあるエナジーを感じ取ってそれを形にしているんだ。作り出すって言うよりもインスピレーションが舞い降りてくるんだ。」

ふーん.....。その時はよくわからなかったが、今はその意味がわかる気がする。

自分が訪れた場所の匂い、湿度、その時一緒にいた人。
全ての時間に独特の雰囲気があって、自分の感度も違う。

その時のエナジーを感じ取ったまま、自由に描いていく..


 

撮影は丸一日行われた。

ただの写真でさえあまり慣れてない私にとって写真撮影なんて、最初の数時間は恥ずかしくてしょうがなかった。

リラックスしようとしても、なかなか体がこわばって自然な表現をつくることができない。
でもだんだん慣れてきて、自分を表現できるようになってきた。



credit to @Oliver Halsman Rosenberg

credit to @Oliver Halsman Rosenberg

credit to @Oliver Halsman Rosenberg

終わったあとやっぱりやってよかったなと思った。

解放された気がした。
自分をからだで表現するって意外と難しい。
自分の心が、からだが思った以上にガチガチに凝り固まっていることにも気づくことができた。

ココロもカラダも、しなやかに、しなやかに。

新しい発見のある出会いだった。



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追記:
どうやらこの旅で制作されたアートがとあるカルチャー雑誌に8ページ記載されることになったらしい。
なんだか嬉しい。





his art: https://www.instagram.com/oliver_halsman_rosenberg/ 
            www.inpraiseofthevoid.tumblr.com

About the Author

Hirono Suzuki

Author & Editor

1992年東京生まれ。東京海洋大学海洋科学部卒業。大学1年生の春休みでのベトナム一人旅でアジアの魅力に魅せられ、それ以降東南アジアを中心に旅するようになる。フィリピン短期留学を2回、IELTS 受験を経て、大学3年でノルウェーへ一年交換留学。2016年8月からノルウェーの大学院にて修士課程Biosciences and Aquaculture専攻。研究テーマは微細藻類。環境や食について考えながら、日々過ごしています。世界27カ国訪問、一人旅派。2017年は読書の年📖👓

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